翌日、2時起床。ダウンを着込んで寝たため、
寒さで目が覚めることはなく、
テントも周辺とは少し距れて設営できたため、静かな夜を過ごす。
テント内で朝食をとり、3時には、ヘッデン歩行開始。
別山尾根経由でアタックする単独行の登山者数人の灯りが遠く
に見える。小屋脇の剱沢への下降点を無事過ぎると、
数十分で雪渓に出る。軽アイゼンとストックを準備していると、
すぐに3人パーティが追いついてくる。聞けば、今日は、
八ツ峰のGフェースからアタックするとのこと。
早朝の雪渓上は寒いかと思い、雨具を着込んできたが、
それほどでもない。何より、見上げれば、
左右の稜線に切り取られた天空には、満天の星々。
寒さは微塵も感じず、雲一つない夜空に本日の快晴を確信する。
ほどなく、源治郎尾根取り付きの目印となる岩を見つけ、
夜明けを待ちつつ、登攀装備を整える。
4時25分、登攀開始。いきなり、
お助けロープ付きの岩場があらわれ、少々もたつくが、以降は、
手元も明るくなり、ぐんぐん高度をかせぐ。
八ツ峰から朝日がのぞく頃、振り返れば、剣沢ははるか下。後立山連峰も美しい。
Ⅰ峰までたどり着くと、早くも剱の頂が目に入る。ぐっとテンションが高まる。ここから、Ⅱ
峰までは登り返しとなるが、さほど厳しくはない。間もなく、
懸垂地点に到着。さすがに高度感はあるが、
今日は我々が一番手なので、
落ち着いてゆっくり準備にとりかかる。下降用の支点には、
鎖のほか、捨て縄がいくつもかけてあり、どれを使おうか迷うが、
えいやとロープ(50メートル)をセットし、懸垂開始。
懸垂点以降は、少し緩くなった斜面をひたすらピークまで登り詰める。
太陽も高くなり、やや暑くなってきたが、周りの稜線には、
雲もガスもなく、快適に登っていく。
徐々に登頂者の話し声が大きくなってくる頃、9時前、
思ったよりも早く、ピークにたどり着く。快晴、無風。
かえりみれば、源次郎尾根の全ぼうが見渡せるほか、
剣沢の彼方には、薬師岳。海側、早月尾根の向こうには、
富山湾も眺めることができる。
ところが、余韻に浸ること十数分。
どこからともなくガスが湧き上がり、
あっという間に周りの山々は雲の中。
あまりの突然の出来事に言葉もない。まさに幸運。
こうなれば、通常ルートの鎖場の渋滞も気になり、名残惜しいが、
下山を開始する。
帰路は、登山者の数自体はさほどでもなかったが、やはり、
鎖場付近は、軽い渋滞中。帰りの最終バスの時刻もあり、
できれば早めにテン場まで戻りたいところだが、焦らず、
順番を待つ。
12時、幕営地着。軽く昼食をとり、テント撤収。テントの数は、
驚くほど少なくなっており、察するに、
今日はどのパーティも下山日だった模様。13時、剣沢を後にし、
別山乗越を目指す。15時30分、室堂着。
源次郎尾根に取りついてすぐの岩場
(手前にお助けロープが見える)
その後は、ぐんぐん高度をかせぐ
ここは、少しいやらしい
八ツ峰が美しい
思わず、見とれる
Ⅰ峰から眺めるⅡ峰
間もなく懸垂地点
(なかなかの高度感)
懸垂ポイントの支点
懸垂の様子
懸垂ポイントを見上げる
山頂からの源次郎尾根全貌
左、八ツ峰 右、源次郎
帰りの鎖場はやはり渋滞中
梯子も順番待ち
別山尾根から眺める源次郎尾根
(中央Ⅰ峰、左Ⅱ峰)